世の中、どこの学校にもモテる女子・・・ いわゆる「マドンナ」という人は居る。海が近くにあるとある高校にもそれに値する人がいた。 「つ・・付き合ってください!!」 「絶対お前を幸せにするから・・っ!」 「好きだああぁぁぁ!!」 あまたの数の男子が勇気をふりしぼって告白しても、 その答えはただひとつー 「ご・・ごめんなさい。好きな人がいるので・・・。」 2年B組、鳳 奈穂。「マドンナ。」
「はああぁぁぁぁ・・・」 2年B組の教室、少し体格のいい男子生徒が大きなため息を吐く。 「なんだ龍吾、またそんなにブルーで?」 そいつの隣で本を読んでいた生徒が愛読書をパタンと閉じて聞いた。 「涼也ぁぁぁ・・やっぱ俺立ち直れそうにねぇぇ・・」 龍吾は涼也の机につっぷしてまたはぁぁ、と吐いた。 その大きな背中を涼也はポンポンと椅子に座りながら慰める。 龍吾は「マドンナ」に挑戦して見事に敗れた集団の一人だ。 そして涼也は龍吾の幼なじみで、良き相談役でもあった。 龍吾の恋にも涼也は後ろから支え、フラれた日もおんおんと泣く親友の背中をさすっていた。 そんな中、龍吾に更なる打撃が来た。 今までたくさんの男をフってきた奈穂が最近、 3年生のサッカー部の部長と交際をはじめたらしい。 どうやら決めゼリフであった「好きな人が・・・」 はフるための口実ではなく、本当の事だったみたいだった。 そのニュースは数々の男子の古傷を玉砕し、特に感受性豊か・・ 人一倍ショックを受けやすい龍吾は一週間学校を休んだ。 さすがの涼也もその時は龍吾を励ますのに苦労した。 それから更に一週間後の今、まだ癒えぬ傷を抱えたまま涼也に背中を叩かれていた。 「・・はぁ、お前もいい加減スッパリあきらめて他の人探せや」 「・・ダメだ・・俺はあの人じゃないと生きていけないんだぁぁぁ・・」 「・・いつまで復帰にかかるやら。」 −その時だった。 「・・・なんで!?受け取ってよ!!」 「・・るせぇ!人前で恥ずかしいんだよっっ!!」 「・・・バカッッ!!」 廊下で騒ぎがあった後、奈穂が走って教室に入ってきた。 その瞳には、涙。 「どうしたの奈穂!?」 「ほら、大丈夫だから泣かないで・・・ね?」 「・・・ひっく・・・っく・・・」 クラスメートの女子が慰める。奈穂の手には弁当箱があった。 どうやら彼氏がはずかしかって受け取ってくれなかったようだ。 「あららら・・・・・可哀想に。・・・ん?」 涼也がそう言っていたら、ガタガタッと椅子や机が 動いたり触れたりするせわしない音が響いた。 「おい、大丈夫か?ったく、最低だなあの男!」 「気にすんなって!お前には合わなかったんだよ」 「ほら、もう忘れた方がいいって!な?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 フラれた男集団が奈穂に群がって来た。 彼らの表情にはどこか必死さがあり、かつどこか嬉しそうだった。 中には 「俺ならあんなヤツより全然お前に優しくできるよ!俺にしなって!」 「弁当、もったいねぇなぁ・・・なんなら俺が食おうか?」 なんて言い出す者までいた。 「・・・馬鹿者だな」 そんな集団を涼也は冷たい目で見ていた。 『恋愛は奪い合い』という言葉を聞いた事がある。 どんな小さなチャンスでも、自分の幸せを手に入れる為には どんな事でもしなければいけない。幸せになるには多少の犠牲が 出てもしょうがない・・・そんな世界観が恋愛の方法として中にはあるかもしれない。 しかし、涼也はそれに「過剰」に基づいて行動している彼らが醜く見えた。 「・・・龍吾はああなって欲しくねぇな・・・」 そう言っていた時だった。背中をさすっていた手の感触が無くなった。 龍吾が立っていた。その形相は硬くこわばり、拳も強く握っていた。 「・・・龍吾・・・?」 そして、群がりの中心にいる奈穂のもとにズンズンと進む。 「!! 龍吾っ!お前だけは・・・」 まさか。と思ったが、龍吾は奈穂の顔をチラリと確認したら、 すぐに教室を出ていった。集団は相変わらず何か奈穂に言っていたが、 慰めていた女子達にひどく怒られ、バタバタとさっき自分達がいた場所に戻っていった。 「龍吾・・・・・?」 予想外の行動に少し戸惑ったが、涼也もまたすぐ廊下に出て龍吾を探した。 −龍吾が見つかるまで、そうかからなかった。 「ぐあっ!」 ッダァン!!!!! 「龍っ・・・・」 「てめぇ・・・自分が何したかわかってんのかぁ・・・?」 龍吾が先ほどの奈穂の彼氏の胸ぐらをつかみ、壁に押しつけていた。 涼也は呼び止めようとしたが、とてもそんな雰囲気じゃなかった。 「何だお前・・・奈穂がとられたからって・・俺にあたんじゃねぇよ・・」 「違ぇ!」 「・・ぐっ・・・・!」 拳の力が強くなるのを見て感じた。 「つき合っているお前の後ろにはなぁ・・・ あの人にフラれた奴が何人いるかわかっているのか? あの人を幸せにしてぇと思ったヤツもいる上でつき合ってんだぞ!」 「・・・ハッ!何でお前らに気を遣ってアイツとつき合わなきゃなんねぇの?」 「だからそういう訳じゃねぇっっ!!!」 拳の力が・・ゆるくなったように感じた。 「・・・なんでそういう立場にいるお前が・・あの人を泣かせてるんだよ・・」 「・・・っ!」 龍吾の顔が少しうつむいたかと思ったら、すぐに片方の手を強く握って 「ハアアァァァァァッッッッ!!!」 「ひっ!!」 ダァン!! ・・・拳が顔にいったかと思いきや、ギリギリ壁に当たっていた。 すっかり彼は腰がぬけてしまったみたいだ。龍吾が解放する。 「・・・次、笑顔じゃなくて・・泣き顔を見せたら・・コロす。」 「・・・は、はいぃ・・・・・」 そう言って龍吾は彼氏を置いて涼也のもとに歩いてきた。 しばらくは無言だったが、角を曲がった瞬間に 「はぁぁぁ・・・なんであんな男とつき合ってんだろ・・・」 そんな龍吾を涼也はニッコリと見ていた。 「・・・んぁ?なんだよ?」 「別にあいつを幸せにできるのは『彼氏』だけじゃないと思うけどな?」 バン!と曲がった背中を叩いた。 「・・・っでぇ!!」 「ハハ、購買行こうぜ♪」 それから翌日、驚くべきニュースが学校中に広まった。 奈穂があの彼氏と別れたというのだ。原因は・・・よくわからない。 そのニュースを兆しに、顔が晴れやかになる者がたくさんいた。 登校中。 「チャンス、またやってきたな。」 「え”−・・またコクったらしつこくねぇかぁ・・?」 「・・龍吾くんっ」 「・・へ。」 声の聞こえた方に振り向く。 風暖かい、春のこと。 End.
□ ■ あ と が き ■ □ yamaが青春系小説だってよ!!(笑(何 なんだか突発的に思いついて少し練って作りあげた作品です。 なんというか・・・色々解説したいとこやら言い訳したい所が たくさんありまくりなんですが恥ずかしいんでもぅ 素に感じたまま受け止めてください;(汗 というか、人間がでるのって初めてですね(ぇ 図書室Top Top