WeWish.....





12月24日、クリスマスイブ。輝く光に囲まれて夢を見る日。
ある人はその素敵な1日を思い切り楽しみ、ある人はいつもの日常のように過ごす。
スターウルフは後者の方だった。ただ1人をのぞいて・・・・・。

「なぁ、リーダー?」

「何だ」

パンサーが何やら不機嫌そうな顔でウルフに問いかける。

「今日はクリスマスイブだよな?」

「ああ」

「それなのになんか今日、いつもと変わらないよな?」

「そうだな」

「・・・なんか、しないの?」

「しねぇ」

「〜〜〜っ!!」

パンサーが悔しそうにじだんだを踏む。
ウルフは相変わらず表情も変えずに静かにタバコをふかす。

「パンサー、うるさいぞ。」

「だってよレオン!クリスマスは年に1度しかないもので」

「刺すぞ」

「・・・う。」

レオンは騒ぐパンサーに対して不機嫌らしい。
レオンもまた静かに自分のナイフを拭いている。

「クリスマスなんて、ガキがする事だろ?」

「・・・別にさぁ、確かにここは部下も含めてみんな男しかいないし、
 もうそんな事ではしゃぐ歳じゃないってわかっているけどさ、
 俺としてはこういうイベントは大事にしたいのよ、リーダー・・」

少し沈んだパンサーを見て、ウルフはあきれ顔をした。

「フン、お前もまだまだガキだな。・・・どっか行って来い」

「へ、じゃあ・・・」

パンサーの表情が変わる。

「ギャーギャーされるのは嫌いだ。騒ぎてぇんなら1人で騒ぎに行け。」

「サンキュー、リーダー!
 じゃあコーネリアのバーでステキな女性でも探してくるかな♪」

そう言うとパンサーはご機嫌そうに部屋を出た。

「・・アイツ、またあんな所に行くのか・・。」

「あの性格はなんとかならんのか?騒がしくて仕方がない」

「でもお前はアイツの腕前は認めているんだろ?」

「・・・フン。」

静かな時間が、また始まった。









「・・・ふあ〜〜〜!!終わった〜!!」

スリッピーがしんどそうに伸びをする。

「コーネリアに戻るのも久しぶりね〜」

「賊の討伐、ザコのくせに結構長引いたからな」

「ファルコにとっちゃストレス解消になったんじゃないのか?」

「フン、まあなっ」

ファルコが誇らしげに鼻で笑った。

「ほらお前ら、そろそろ着陸するぞ。」

そうしてグレートフォックスは無事にコーネリアに戻ってきた。
ここ最近、スターフォックスは長期戦の仕事をしてメンバー全員に疲れが残っていた。

「さて、みんな今回はご苦労だった。
 しばらく休暇をとるから、今日はゆっくりするといい。」

「やった〜!!久々にゲームしよっと♪」

スリッピーがはしゃぐ。よっぽど嬉しいみたいだ。

「俺ぁもう疲れた。部屋で休ませて貰うぜ。」

ファルコが自分の部屋に戻った。
それと同時にクリスタルが少し照れくさそうにフォックスに言う。

「フォックス、その・・一緒に街に出てみない?」

「ん、あ、あぁ・・・。
 悪いがまだ後始末が残っているんだ。ごめん。」

「ぁ、そうなの・・。じゃあ私1人で行ってくるわね。」

「あぁ、すまないな。気を付けて!」

少し寂しそうな顔して出ていくクリスタルを見て、
フォックスは不思議だった。こういう事は少なくないが、
クリスタルがあんな表情をするのは初めてだった。

「・・・今日、何かあったかな?」










「んはぁ〜〜っ!やっぱここの空はいいねぇ♪」

コーネリアについたパンサーは機嫌良く深呼吸をする。

「さっ、あのバーで素敵な出会いをしますかっ」

イルミネーションに飾られた賑やかな街中に入った。

「う〜ん・・さすがにこんな日にあの娘に会えるって事はないよなぁ・・」

賑わいの中、残念そうな笑顔をしていたら、
ふとショーウィンドウの前に立っている少女に目が入った。
それはひと目見れば忘れることのない、青い髪ー

「・・神様ってもんは本当にいるのかもしれないね」

心の現れなのか、軽い足取りでその少女に向かう。









「こんな所、1人で歩き回ってどうするのよっ」

今のクリスタルにとっては、街のイルミネーションや
楽しそうにしているカップルなど、ただただストレスの元となった。
自分もこの景色にとけ込むつもりだったのに・・・

「・・・フォックスくらいの歳になると、私みたいに
 こうイベントにドキドキしなくなるのかしら・・・」

愚痴をこぼしていると、あるショーウィンドウの前に足が止まった。
そこには、可愛らしいバッグが飾られていた。

「わぁ・・・いつ見ても素敵だわ・・・・・。
 欲しいけど・・お金ないしな。ガマンよ、クリスタル!」

そう言っていると、ガラス越しに背丈の高い男の姿が見えた。
クリスタルは驚いた顔で振り返る。

「パンサー!!」

「やぁクリスタル♪お久しぶりだね」

「なんでこんな所に?」

「ウチの男連中、クリスマスというものを知らなくてね。
 その楽しさを知っている俺はこうして1人楽しんでいるのさ」

「あら、私もそうなの!クリスマスほど楽しいものは無いのに・・」

「わかっているねハニー♪全く最近の男ときたら・・・」

パンサーの視界からふふっ、と会話を楽しんでいるクリスタルから視線がずれる。
その先には、彼女に似合いそうなバッグがあった。

「・・さっき、それ見ていたよね?」

「えぇ、でも最近苦しくってね」

「買おうか?」

「え?」

突然の発言に、一瞬クリスタルは戸惑った。

「こんな素敵な日に、こんな素敵な人に出会えたんだ。
 クリスマスプレゼントだと思って受け取ってくれよ」

「・・・・ありがと。でも、それはできないわ。
 ウチは私だけじゃなくてもいっぱいいっぱいだから、
 私だけそのような物を受け取るわけにはいけないわ」

「ふ〜ん・・おたくも大変だね」

「ふふっ、どうも」

残念そうな顔をするパンサーにクリスタルは微笑む。

「じゃあさ、クリスタル。食事だけでもどうだい?」

「ぇ・・でも・・・」

その時クリスタルの脳裏に彼の言葉が浮かんだ。

「ん、あ、あぁ・・・。ごめん。」

(・・こんな日に来てくれないフォックスが悪いわよね・・)

「少しだけなら・・お願いしていいかしら?」

「ほ 本当かい!?良い店を知っているんだ、行きましょうか♪」

「ふふ、パンサーって面白いわね」

そうして2人は街中の奥に進んでいった。
そのなか、震えて2人を見ていた男がいたり。










「ペッピーも人使いが荒いよなぁ・・・」

少し面倒くさそうな顔をしてメモを眺めるフォックス。
クリスタルが出ていった後、ペッピーに部品の調達を頼まれたのだ。

「俺も色々忙しいのにな。・・そろそろ街か。・・・・・!?

フォックスが目の当たりにした街の光景はあまりに衝撃的だった。
綺麗に飾られたイルミネーション。ケーキ屋の前で歩いているサンタ。
まるでこの光景は・・・・・

「きょ 今日ってクリスマスだったのか!!?」

あまりの多忙の為、時間の感覚を失っていた。
12月に入っていたのは知っていたが、まさか今日がクリスマスとは・・・
そしてフォックスは更に嫌な事を思い出す。

「!! だ だからクリスタルは今日俺を・・・?う うわーーーーーー!!!!!!」

自分のしてしまった事の重大さに今更気づき、焦るフォックス。
もう彼はパニックにおちいってしまっている。

「と とにかくクリスタルを探そう!」

フォックスは街の中へ走り出した。それはもう、凄いスピードで。
彼女を見つけるにはそう時間がかからなかった。しかし・・・・・

「じゃあさ、クリスタル。食事だけでもどうだい?」

「少しだけなら・・お願いしていいかしら?」

「!!!!!!!!!!!!!!!」

あまりに衝撃的だった。クリスタルがあのパンサーと街の奥に行く。
フォックスの震えはしばらく止まらなかったが、

「ふ、2人を追いかけないと・・・!」

フォックスもまた必死な形相で街中を駆け抜けていった。








飾られた街の中、2人は話を弾ませながら街道を歩く。

「あ〜、こうやってクリスタルと歩けるなんて俺は幸せ者だな♪」

「もう、パンサーってオーバーねぇ」

「とんでもない!俺ぁもう死んでもいいね!」

「ふふ、まったく・・・・・・・・・!!

急にクリスタルの表情が険しくなった。

「・・・どうしたんだい?」

「この感じ・・・誰かが泣いている・・・!」

そう言うとクリスタルは住宅地の方に走りだしていった。

「お おいっ!
 ・・・・・・・フ、情熱的な所も素敵さ、ハニー」

パンサーも後を追った。





「おい!消防隊はまだやってこないのか!!」

「全員避難したのか!?」

「くそっ!!火の周りが早くて追いつけないっ!!」

「・・なんてこと・・・・・」

向かった住宅街は何件も火が連なり大火災となっていた。
空が火で赤に染まっている・・・

「これはひでぇ・・・全員無事なのか?」

「・・いいえ、感じるわ。1人だけ、小さな鳴き声が・・・」

「駄目だ!入るんじゃない!!」

「そうだ!消防隊が来るのを待て!!」

「駄目!!中に留守番していた子供がいるのよ!!」

女性が家の前で泣き叫んでいる。燃えている家に入ろうとするのを
2人の男性が必死に引き留めている。

「誰か・・・あの子を救って・・・!!」

その瞬間、クリスタルが燃えている家の中に走っていった。

「!? クリスタルっ!!」

「あなたは避難した人を保護してあげてっ!!」

そういうと、渦巻く炎の中に姿を消した。

「くそっ!この炎の中じゃ助けられねぇ!!・・・・・!?」

「お前・・!?」

炎は渦巻く。













「何処にいるの!!返事して!!」

激しく燃えている中、必死に駆け回る。火の周りが早く、急がないと自分も危ない。

「時間がないわ・・・・・!!」

「ふぇ・・・ぇん」

いた!!部屋のはじっこで、うずくまって泣いている子供がいた。

「よかった・・・!もう大丈夫よ、さぁ行きましょう。」

子供を抱きかかえ、急いで部屋を出ようとする。しかし・・

「きゃあぁっ!!」

燃えた柱がクリスタルめがけて倒れてくる。危ない・・・!!

「もう駄目・・・・・!!」

その時、部屋の外からズギュン!と弾丸が飛んできた。
柱は軌道を変え、ズウウゥウン・・・と横たわった。

「大丈夫かクリスタル!!」

「フォックス!!!」

そこにはブラスターを構えたフォックスがいた。

「無事だな!?急いで脱出するぞ!!」

子供を抱くクリスタルの手を引くフォックス。その時!!

「何!?」

所々の柱が燃え尽きたせいか、天井が崩れて3人めがけて降ってきた!!

キュン!キュン!!ブラスターの威力では軌道が変わらない

「くそっ!しっかりつかまってろ!!」

「・・・・・っ!!」

子供を抱きしめるクリスタルを、フォックスがおおうように抱え込む。
燃えている天井が3人にぶつかる・・・・・!!


























ズドオオォオォォォォォオオォォオォン!!

「!!」 屋根は激しい勢いでわずか3人を避けて倒れた。 「なんだ今のは・・?とにかく脱出するぞ!!」 「え ええ!!」 2人は無事に脱出をすることができた。 「おかぁさあぁぁん!!」 「あぁ良かった・・!!ごめんね・・もう離さないから・・・」 親子は涙をいっぱいに流して抱きしめた。フォックスたちに消防隊が来る。 「あなた達のおかげで、無事小さな命が救われ、  火災を鎮火する事ができました。本当に感謝します!!」 「被害にあった方々の対応はこちらですぐに始めますのでご安心下さい!」 「ええ。宜しくお願いします。」 「フォックス・・さっきはありがとう。」 「気にするなよ、そんな事。しかし最後のは一体・・・」 クリスタルがハッと気づき、辺りを見回す。 そして街道の真ん中に1つ、バラの花が落ちていた。 「・・・パンサーだわ・・」 「・・・確かにあれは威力のある銃、しかも相当な  技術がある人でなければできないな。奴はどこに・・・?」 もう周りには彼の姿はなかった。 「・・・ありがとう、パンサー・・・」 バラの花を拾い、大事そうに包み込んだ。 「あーぁ、おろしたての服もボロボロじゃねぇか」 ランチャーを片手にしてパンサーは服をはらう。 「せっかくクリスタルと素敵なディナーでもできると思ったのにねぇ・・」 残念そうな顔をし、フッ、と目をゆっくり閉じて微笑む。 「しかしまぁ・・・助けようと思う強い意志があれば水の中だろうが  炎の中だろうが飛び込んでいけるんだね。クリスタルも・・・キツネ君も。」 ランチャーを愛機に入れ込む。 「俺と彼の差はそこにあるんだな。ネコ舌な俺には外から見ているだけしかできなかった。  だが・・・銃の腕前はまだまだだな、・・・・・フォックス。」 そう言うとひょいっと機体に飛び込んだ。その表情はどこかしら嬉しそうなものがあった。 「すっかり暗くなってしまったな。」 「ええ。・・でも綺麗・・・」 フォックス達は街に戻っていた。夜を迎えた街は 飾られたイルミネーションによって光り輝いている。 クリスタルはとても嬉しそうだが、フォックスの表情はどこか堅かった。 「く、クリスタル・・・」 「なに?」 「その・・すまないっ!!」 「!!」 フォックスは頭を下げた。クリスタルは突然のことに驚いた。 「どうしたのフォックス?私は別に・・・」 「せっかく・・せっかくクリスタルがこんな特別な日に  俺を誘ってくれたのに俺ってば仕事の事で頭がいっぱいで・・」 「そんな事・・・もう・・」 「もし許してくれるのなら・・受け取ってくれないか」 ・・!!フォックス・・これ・・・!!」 「わぁ・・・いつ見ても素敵だわ・・・・・。  欲しいけど・・お金ないしな。ガマンよ、クリスタル!」 「この前・・ショーウィンドウで眺めているのを見て・・・」 ーフォックスが差し出したのは、まぎれもなくクリスタルが欲しがっていたバッグだった。 「・・・・う・・・っ」 「!!!!!!」 クリスタルから涙がこぼれ落ちた。 「悪いがまだ後始末が残っているんだ。ごめん。」 (・・こんな日に来てくれないフォックスが悪いわよね・・) 「大丈夫かクリスタル!!」 「あなたは・・・私たちの為に・・・仕事をしていたのに・・・」 「私を・・・助けに来てくれたのに・・・謝るのは・・・私なのに・・・」 「ど どうしたんだクリスタル!!俺、また何か・・・」 「ウチは私だけじゃなくてもいっぱいいっぱいだから、  私だけそのような物を受け取るわけにはいけないわ」 「ふ〜ん・・おたくも大変だね」 「1番大変なのは・・・あなたなのに・・・・・」 「も もしかして全然欲しくなかったか!?俺なんて事を・・」 「違うわよ!!もぅ・・・本当に不器用なんだから・・」 そういうとクリスタルは泣き崩れた顔で笑った。 「・・・ありがとう、フォックス。本当に・・ありがと。」 「わ わかったから、お願いだから涙を拭いてくれ・・」 泣き出したクリスタルにフォックスはどうしたらいいのか、こっちも泣きそうになっていた。 そんな2人を、クリスマスの暖かい輝きが包み込む・・・・・ 「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・。」 「・・帰ってくるなりなんだ、うとましい」 「・・いや、少し有意義すぎてね・・・」 帰ってきたパンサーは心身疲れてぐったりしていた。 「俺・・風呂入ってくるわ・・・」 「パンサー」 「・・?なんだい、リーダー・・」 「シャンパンの味も悪くねぇな」 「!!」 12月24日、クリスマスイブ。輝く光に囲まれて夢を見る日。 ある人はその素敵な1日を思い切り楽しみ、ある人はいつもの日常のように過ごす。 スターウルフは・・・前者の方なのかもしれない。 End.
★ ☆ あ と が き ☆ ★ ・・・やる気があれば1日で書けるもんなんだなぁと(テレパシーズ書けよ と、いう事で今回はボソッと言っていたパンサーVSフォックスをやってみました。 作成前は本当にタイマンやって、その途中今回みたいな事件が起きて、 2人力合わせて解決しちゃう・・ってものでしたが、なんか直接的すぎるしあまりに 原作と離れる感じがしちゃうのでこんな感じにしあげました。 ・・・まぁ、いつも離れている気もしますが(汗 パンサー資料なさすぎで、どんな口調にすればいいのか常に不安定でした; ちなみに最後あたりにいった「ネコ舌」は当然「熱いのキライ〜」という意味じゃなくて、 ちなみにあの時すぐにクリスタルの後追えなかった自分が情けないな、という戒めです。 あと〜〜〜・・今回は3人のそれぞれの視点で書くのが楽しかったです♪ 特にフォックスは焦らせまくりで(笑 もぅごめんなさい。クリスタル関係で焦るフォックス大好きです。 かといってクリスマス忘れるか!?という感じですが、彼には是非とも 忘れて欲しいのですよ。フォックス日常関係だと天然入りそうなんで(ぇ 可愛い28歳であって欲しいですね!クリスタルに遊ばれているけど(笑 よろしければ感想くだされば幸いです^^ 今回色んな人がクリスマスについて色々考えをいっていますが、 実際クリスマスを楽しむことに制限は何にも無いと思います。 年齢だの性別だの、そんな事は一切考えず、クリスマスは楽しめば それでいいんじゃないかと思います。是非あなたもあなたらしい 思い出に残るクリスマスをお過ごし下さい!! クリスマスプレゼントというわけではないですがおまけの パンサー帰還番外編 を。ギャグなので今の雰囲気維持したい人は見ない方がいいのかな? それでは皆さん、MERRY CHRISTMAS!!
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