在るべき場所





ならずもの集団スターウルフ。アパロイド本星から無事脱出した彼らは現在、
平穏を取り戻している惑星コーネリアの再建されたパンサーお気に入りのバーにいる。
ウルフはここに来るのを拒んだのだが、パンサーがあまりにしつこくせがむので、
あきらめるのを待つより手っ取り早い・・と思い、しぶしぶついて来た。

さすがパンサーが気に入るだけある。しっとりと暗いブラックライト、
静かに響くジャズの音、そして極めつけに所々に飾られたバラ・・。
ウルフはどうもその雰囲気になじめず、落ち着けなかった。
その横に、淡い色のカクテルを揺らしながらパンサーがレオンに聞く。

「お味はどうだい、レオン?」

「ふん・・・悪くはない、と言っておこう」

口は悪いがレオンは気に入っているらしい。パンサーに不気味にニヤリと微笑みを見せる。
その時ウルフがガタッと乱暴に席を立った。

「どうしたんだい、リーダー?」

「・・・口に合わねぇ」

それだけを言うと、ウルフはバーを後にした。

「・・・お似合いだと思ったんだけどねぇ・・」

残念そうな笑みをすると、パンサーは手にあるカクテルをくいっと飲んだ。







階段を上っていくたびに、光が射し込んでくる。
コーネリアの空はとても青かった。とても澄み切っており、雲1つない。

「・・・飛びたくなるような空だ・・」

そうつぶやくとウルフは愛機ウルフェンで待機していようと思い、足を進めた。
その時、ドン!とウルフの大きな背中に誰かがぶつかった。

「おい!気を付けやがれ!」

「す、すいません!前が見えづらくって・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・あっ!」

振り向くとそこには見覚えのある姿があった。
青い髪、澄んだ瞳。名前はー

「・・・クリスタル。」

「あら、覚えてくれてて嬉しいわ、ウルフ。」

クリスタルは両手いっぱいに紙袋を抱えながら微笑んだ。
おそらく買い出しか何かだろう。確かにこれでは前が見えづらいはずだ。
彼女がここにいるということは近くにウルフのライバル、フォックスもどこかで
待機しているはずだが、この大空の下では戦う気分にならなかった。

「こんなところでどうしたの?ウルフたちも休暇中?」

「・・・・よけいなお世話だ。」

ウルフのそっけない態度ながらもクリスタルは微笑んでいる。
そして改まったようにクリスタルは話し始めた。

「・・・アパロイドの時は、ありがとう。」

「なんの事だ」

クリスタルの礼にも、やはりウルフはそっけなく答える。

「あなた達がいてくれなかったら、私たちは負けていたわ。
 今までなかなかお礼言えなかったから、・・・ね。」

「・・言ったはずだ。お前らを助けたわけじゃねぇ。
 ただあの機械野郎におとしまえをつけたかっただけだ。」

「でも・・・・」

「お前らと協力する気なんか毛頭ねぇ。だからもう俺達に
 むやみに近づくな。・・・じゃあな。」

「ウルフ・・・・」

寂しげな顔をするクリスタルを背にし、ウルフはまた足を進めようとした。

その時、ドオォォォォオオン!!という音が首都中に響いた。

「!!」

2人が音の鳴った方角を見ると、武装したならずものが2人、
銃を連射しながら何かを叫んでいた。

「オイッコニー様を釈放しろォ!」

「憎きコーネリア軍を壊滅させるのだ!!」

2人は無差別にマシンガンを乱射し、建物が崩れたり、
逃げる市民の騒ぎ声が辺りを響かしているなど、大混乱におちいっていた。

「フン・・オイッコニー軍の残党か。放っておけばそのうちコーネリア軍に・・

ウルフがそう言っている間に、近くで何かがドサッと落ち、
誰かが横を走り抜けた。ブラスターを持ったクリスタルだ。

「!! おい!あんな奴ら放っておけ!」

「このままじゃ市民が危ないでしょ!」

そう言うとクリスタルは単身で残党の元へ走っていた。

「馬鹿な事を・・・!!」

「・・・ありがとう・・・

ふと、ウルフの脳裏にさっきのクリスタルの言葉が横切った。

「・・・・・・・っ!」








残党の暴走は更に激しくなっている。

「オラオラ、どうした!?・・・・・ん?」

暴れる残党の足下に何か黄色いボールが飛び込んできた。
その瞬間、それは発光し、ドォン!と大きく爆発した。

「ぐわあぁぁっ!」

足場から落ちた残党の目の前には、グレネードを持ったクリスタルがいた。

「オイッコニー軍は壊滅したのよ!おとなしく降伏しなさい!」

「この野郎っ!」

起きあがった残党はクリスタルめがけて撃ってきた。
クリスタルは素早く横に転がり建物の影に隠れる。

「・・・敵が2人もいる上、この広さじゃやりづらいわ・・」

クリスタルがそう言った瞬間、ドン!と背後の建物の上部が爆発し、
外壁がクリスタルめがけて落ちてきた。

「・・・きゃっ!」

やむをえず、クリスタルは避け、残党の目の前に出てきた。
が、外壁が落ちてきた衝撃で倒れてしまった。
そのスキをつき、残党2人がクリスタルに銃口を向けた。

「これで終わりだァ!!」

「・・・・・・!!」

ダァン!と弾丸がクリスタルに向かった。




しかしその瞬間、バッと何か大きなものがクリスタルの前に現れ、
クリスタルから弾丸を防いだ。それはー

「ウルフ!?」

「来てみれば、思った通りだ・・」

ウルフの背中に当たった弾丸は見事に弾かれていた。

「!! またジャマが入ったか!」

「残党ごときが、ウゼェんだよ!!」

クリスタルに背を向けると、ウルフは残党めがけて疾風のごとく駆けていく。

「こ・・・こっちに来るぞ!!」

「かまわない、う、撃ちまくれ!」

連射される弾丸はウルフにはかすりもしなかった。ウルフの方が、速い。
そして気づいた頃にはガッ、と2人の喉元に銃をつきつけたウルフがいた。

「ひっ・・・・!」

「お前は・・・一体・・・・」

眼帯のレンズは光で反射し、もう片方の瞳はギロっと刺すように2人を睨み、

「・・・ウルフ・オドネル。テメェらも元ならずものなら知っているだろ?」

とてつもなく重々しいその声は、残党2人の顔を恐怖の色に変えた。

「ウルフ・オドネルってあのサルガッソーの・・・・!!」

「お、おい、やばいぞ!!・・・逃げろ!!」

「とっとと失せろ、雑魚ども!!」

残党達は逃げていったが、時はすでに遅く、到着したコーネリア軍に捕まってしまった。

「ウルフ!」

クリスタルがウルフの元へ駆けていく。とても心配そうな顔だ。

「さっきの弾丸・・・大丈夫?」

「フン、なめてもらっちゃ困る。平気だ。」

「・・・ごめんなさい。あの時、あなたの言うとおりに
 していれば被害は拡大せずにすんだかもしれないわ・・・」

「・・・・・・」

目を閉じてすっかり落ち込んでしまったクリスタルにウルフが静かに口を開く。

「お前は俺とは違うんだ。お前には仲間がいる。お前だけの体じゃないんだ・・」

「・・・それはあなたも同じ事だわ・・」

「一緒にするな。俺は強い。」

「・・・・・・・・・。なにそれ?」

「・・・うるせぇよ。」

ウルフの言葉がどこか可笑しくて、クリスタルはクスッと笑ってしまった。
始めに出会った時と同じ笑顔に戻った。

「ありがとうウルフ。元気を取り戻せたわ。」

「・・・フン。もうお前は在るべき所に帰れ。
 俺達は敵同士。二度と話しかけてくるんじゃねぇぞ。」

「・・・・!」

このウルフの言葉で、最初に言われたウルフの言葉の意味が
クリスタルにはわかった。前のと比べると、どこか優しさを感じた。
そしてクリスタルは再び微笑み、

「・・いいえ、いつか私たちは仲間になれる気がするわ・・ウルフ。」

「・・勝手にしろ。コーネリア軍が集まってきたから
 そろそろ俺はおいとまさせてもらうぜ。」

「あ、ちょっと待って!」

クリスタルは慌ただしく落とした紙袋を拾い、
中からリンゴを取りだしウルフの手に押しつけた。

「・・なんだこれは」

「今はこんなものしかないから悪いけど、一応・・お礼よ。受け取って!」

「・・・・・・」

「ほら、ウルフっていつもタバコばかり吸っているからたまには
 健康にも気遣って食物繊維をとらなきゃ・・ね?」

「だからよけいな世話だって言ってるだろ・・」

そういうとウルフは面倒くさそうな顔をし、リンゴを手にクリスタルのもとを後にした。

「・・さぁ、私も帰らないと。私の在るべき場所・・・フォックス達の元に!」

満面の笑みを浮かべながらクリスタルは首都を後にした。








「ただいま〜!」

「おかえり〜クリスタル!」

母艦グレートフォックスに帰ると、メンバー4人ともブリーフィングルームに集まっていた。

「? どうしたんだクリスタル、妙に上機嫌じゃないか?」

ペッピーの質問にクリスタルが笑顔で答える。

「ちょっとウルフに会って・・・ね。」

その時、ガシャンとカップが割れる音がした。フォックスが凄い顔してクリスタルを見ている。

「ク、クリスタルがウルフと・・・!?」

「? 何動揺してるんだお前?」









その頃ウルフもバーに戻っていた。

「お前ら、そこら辺にしねぇと置いてくぞ。」

「はいはい・・・ってリーダー、その手に持ってるのは?」

パンサーがウルフの持っているリンゴに指さす。

「あぁ・・これか」

ウルフはフン、と鼻息で笑いリンゴをシャリッと一口かじり、

「食物繊維だとよ」

「?」


End.




▼ △ あ と が き △ ▼ ・・はい。調子乗って2作目です(爆)ここまで読んでくださり本当に感謝です。 今回は書きたかったものをまとめてみました。バトルシーンもそうなんですが、 とにかくウルフ!(何)ウルフを書きたかったんです!! で、実際に書いてみたところ、ウルフって難しいキャラですね・・^^; キャラを壊さずにどうやって格好良く魅せようか、と思ってやってたら やたらと無口になりましたウチのウルフさん。もうちょっとハキハキ喋りますよね 公式って?まぁ・・これも個性ということで!(待 ちなみに言っておきますけどクリスタル×ウルフを狙ったわけじゃないですよ(爆 ウルフの話を一番聞けそうなのはクリスタルかな〜と思って書いた結果・・・^^; フォックスが嫉妬しそうな仕上がりになりましたと(笑 文才が無いので伝わりづらかった所をまとめてみますよ(爆 ウルフとクリスタルは敵同士。でもクリスタルはウルフを信用しつつあると 思うんですよ。でもウルフはフォックスがいる以上立場をハッキリさせて置きたいと 考えるかなと思いました。だからこの話でオーバーにウルフがクリスタルを離そうと したのはそういう意味もあるし、互いの「居場所」もあることを気づいて欲しい、 というかなんというか・・・う〜ん・・;(文才無 でもライバルといっても仲間以上に結べる絆もあると思うんですね。特に スターウルフとスターフォックスは。ウルフの言葉の裏返しの優しさが 伝わってくだされば幸いです^^ 書きたかったものといえば、慌てるフォックス(笑 次回(あるのかよ)はフォックスとパンサーがクリスタルを巡る話でも 書こうかなぁ・・・・?とか変な話考えていたりします。 ちなみに今回の話の後、パンサーは凄い悔しがったようです(笑 ぅお、長くなった; とにかく、読んでくださりどうもありがとうございました!! よろしければ感想くだされば幸いです^^
図書館トップ トップページ