「・・・じゃあ私はこのエリアを警備すればいいのね?」

「ああ。・・・1人で大丈夫か?」

「何言っているの!私だってスターフォックスの一員よ!・・大丈夫。」

「・・・。そうだな。よし、じゃあまた後で落ち合おう!」

「わかったわ。そっちこそ頑張ってね!・・・・・・・・・・・・・・・





「・・・・・くそっ!!」

その言葉が最後だった。今はもう、彼女は・・・ここにはいない。
フォックスは落ちていたクリスタルの通信機を強く握りしめる。

「クリスタル・・・・・!」



第 2 話 「 戦 火 」

フォックスは重い足取りでグレートフォックスに戻った。 その片手には、温もりを失った彼女の痕跡がある。 他のメンバーはみんなモニタールームに集まっていた。 「遅ぇぞ。どこほっつき歩いてたんだ?」 「ああ・・・悪いな。」 「フォックス、大丈夫・・?」 スリッピーが不安げな表情で心配している。 フォックスは無理に微笑んでスリッピーに返した。 「フォックス、将軍に挨拶しなさい。」 「・・将軍?」 部屋を見回すと正面の大きなモニターにコーネリア軍指揮官の ペパー将軍の姿が映っていた。彼の表情もどこかしら複雑なものを感じる。 「フォックス君、久しぶりだね。」 「お久しぶりです将軍。ご無礼、申し訳ありません。」 「いや、いい。君も・・疲れているだろうしね。」 「・・・・・。」 「さて、メンバー全員が揃ったところで話すとしようか。」 「そういえば、なんで将軍と通信しているんだ?」 「クリスタルがさらわれた時の通信記録をペッピーがコーネリア軍に送ったんだよ。 そしたらペパー将軍が直々に話がしたいって・・。」 「2人とも、今は将軍の話を聞け。詳しくはそれからだ。」 2人の顔がモニターに戻った。 「まず、クリスタル君をさらった犯人が確定した。 奴の名前はタイガー・グランディオ。」 「タイガー?聞いたことねぇな。」 「やはり・・そうでしたか・・。」 「ああ。間違いない。」 「何者なんですか、そいつは?」 「最近名をあげているならずもの集団のボスだ。 さっきの宝石店を襲った集団とは違うみたいだがな。」 「俺らが騒ぎを起こしているスキにクリスタルをさらったてか・・クソッ!」 「でも、そんなヤツとクリスタルにどんな関係があるの?」 「それはきっと、クリスタル君だからこそさらわれたのだろう。」 「・・・・・?」 私は今、どうなっているんだろう。 私は今、どこにいるんだろう。 みんなは・・・フォックスは、どこにいったんだろう。 体に束縛感を感じる。頭もなんだかぐるぐる回っている。 ・・・。私、どうなっちゃったの? 「・・・・・う・・・・ん・・・」 重いまぶたを開けた。体にひどいだるさを感じる。 目に広がった光景は、突然すぎて理解するのに時間がかかった。 クリスタルはたくさんコードの結ばれている、機械的な椅子に座っていた。 手足には輪がかけられていて、椅子とくっついており、身動きができない状態だった。 頭はとても不快で、気のせいかテレパス能力が鈍っているようにも感じた。 ここは・・・広い。目の前には大きいガラスを通して宇宙が広がっているのが見えた。 そして自分の前に・・・1人の男。 「・・・目覚めたか。」 「・・・あなたは?」 赤い鎧を身にまとった屈強な体格の虎がそこにいた。 その瞳は冷静で、かつなにか圧力を感じられた。 「俺はタイガー・グランディオ。お前をさらった張本人だ。」 「・・・っ!あなた、何がしたいの?こんな事してただで  すまされると思っているの?早くこれを解除しなさいっ!!」 「フン、そうするわけにもいかないな、クリスタル。俺にはお前の力が必要なんだよ。」 「・・・私の・・・力・・・?」 「ああそうさ。お前のその色々な物を感じ取ることができる、テレパス能力がな。」 「・・意味が・・わからないわ。」 色々な事が突然すぎて、クリスタルは少々混乱していた。 「そのテレパス能力があれば、素晴らしい軍事の戦闘力になる。 波形察知による敵艦の位置の把握、的確なポイントへの攻撃、相手の攻撃まで読めるようになるし・・・ そうだな、兵器を開発して売りさばくも良い。利用方法は様々だな。」 「そんなっ!?絶対に駄目だわそんな事!!それに・・・」 「それにその様な戦闘力を得て何がしたい・・・か?」 「!」 「・・・フン、その力を使ってここらの領地を広げるのもいいが・・・  俺には大きな目的が1つある。」 「・・・目的・・・」 「都合が良いことに、お前は『スターフォックス』の所属らしいな。」 「そ、そうよ!それが一体・・・」 「スターフォックスは昔からコーネリア軍と親交がある。  その隊員が誘拐されたと聞けばすぐ飛んでくるだろうな?」 「・・・あなた・・・まさか・・・!」 座っている椅子のせいで上手く能力が働かないが、 タイガーの周りには憎悪と・・・どこか哀しみの波動を感じた。 「復讐だ。」 「・・・もし将軍の推測通り、そいつがクリスタルの能力を  利用して、コーネリア軍に宣戦布告をするとしても・・・・・」 「極端だな。コーネリア軍に何か深い憎しみか何かでもねぇとそこまでやらねぇぞ?」 「・・・それなんだがな・・・」 「ペッピー、何か心当たりあるの?」 「・・・少し昔の話だがな、タイガーはコーネリア兵志望者だったのだよ !!・・・・・なんだって・・?」 「有能な男だったよ。各試験にも難なくこなし、知識も富んでおり  受験者の中から頭1つでていたくらいだよ。最終考査に入るのも遅くなかった。」 「・・・ん?でもそれじゃあ話がおかしいよ。何で復讐なんか・・・」 「・・・・・。考え方が我々とは大きくちがったのだよ。  『統率する物には力が全て』と、最終試験である戦闘試験で試験管を気絶  するまで殴ってしまった。気絶しても攻撃をやめず・・・興奮していたよ、彼は。」 「・・・・・ひでぇ・・・」 「確かに統べる者にはそれなりの力が必要だ。だが他にも  大切な要素はたくさんある。君たち、スターフォックスのようにな。」 「・・・・・・・」 「試験管を負傷させた事もあり、我々は彼を危険人物とみなし、  受験を落としただけではなく放置しないようにもこの惑星を追放したのだ。  今回の件は、おそらくその事だろう・・・・・」 「そんなぁ!それって一方的にタイガーって奴が悪いじゃんか!  そんなのただの逆恨みだよ〜?」 「・・・理由は何にしても、俺達の大切な仲間をさらって  この宇宙を脅かそうとしているのは絶対に許せない・・!!」 握っていた拳が更にかたくなった。 「今回は我々に強く関わっている。君たちは・・・」 「いえ、俺達も行かせて下さい。クリスタルが待っている。」 「そうだな。そのバカ面とやらを見てみたいしな?」 「何だか凄い技術みたいだし、救助ついてに部品もらっちゃおうかなぁ?」 「・・・ということなので、そろそろ準備にとりかかっていいですかね、将軍?」 奮起するメンバーをなだめるような声でペッピーが問う。 それを見て、ペパ−は安堵(あんど)したような表情を浮かべ、 「・・・君たちは本当に頼もしいな。それでは我々も早急に準備を始める!」 「よし、すぐに戦闘ができるように配備し、アーウィンに!」 おう!と室内に響き、各自くるべき戦いに向かって駆けだした。 「・・・確かに人にはそれぞれ考え方があるけれど、  あなたのやり方は非情で、やりすぎだったわ・・・。」 「・・・甘いな。あいつらは何もわかっていなかった。  衝突するのを避けるため・・・力に負けるのが恐ろしくて俺を追放したんだ・・・!!  そんな未熟な軍の治める星なんか・・・潰れてしまえばいい。」 −不敵な笑み。 「そんなこと・・させない・・・・っ!!」 ガチャッ!ガチャッッ!!と必死に抜け出そうと動く。 しかしそれも無駄な抵抗で、金属のこすれる音だけ響いた。 クリスタルのその様子を見て、ゆっくりとタイガーが近づく。 「黙れ」 「−!!」 ぞくっとした。能力とかそういうものではなくて・・本能で感じた。 「もう少し・・・自分の立場を考えたらどうだ?  命というものを知っているのなら・・・賢く従え。」 「・・・くっ!」 さっきとは違い、気迫が凄い。 圧倒されて喋れない自分に嫌気がさした。 クリスタルに背を向き、ドッ・・・ドッ・・・と、重い鎧をきしめかせて出口に向かう。 「・・・時期にコピーがこの艦にいきわたる。おとなしくしていろ。」 そして・・・タイガーの姿が見えなくなった。 ガチャッ!ガチャッッッ! 危険だ。あの男は。 ガチャ!ガチャッ! 自分の力のせいで、たくさんの被害者が出てしまう。 ガチャ・・・・・チャ。 「・・・来ちゃ駄目・・・フォックス・・・・!!」 「・・グリーン信号確認。クリスタル・・待っていてくれ。」 「スターフォックス、出撃!!」 戦火の炎は燃え上がった。 To be continued.....






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